1975年の夏の日に
夕べの雨はすっかり渇いて
誰かがいたずらに置いた石に つまづいた
擦り減った記憶が 一瞬再生された
夏かもしれない
涼しい木陰にセミが鳴いている
新鮮な風景の中
他人の失敗を喜んだ
自分じゃなくてよかった
風は
焼かれた空気をとかして
深緑はそれを吸って
呼吸している
メタセコイヤは ただ風に吹かれて
重く揺れ
深い陰を落としている
僕はそんな中で
自分のエゴを
自覚した
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夕べの雨はすっかり渇いて
誰かがいたずらに置いた石に つまづいた
擦り減った記憶が 一瞬再生された
夏かもしれない
涼しい木陰にセミが鳴いている
新鮮な風景の中
他人の失敗を喜んだ
自分じゃなくてよかった
風は
焼かれた空気をとかして
深緑はそれを吸って
呼吸している
メタセコイヤは ただ風に吹かれて
重く揺れ
深い陰を落としている
僕はそんな中で
自分のエゴを
自覚した
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それに気づいたのは
相当たってからの事だった
手元にあるものはすべて
賞味期限が切れている。
隣りのだんなさんは
毎日のように車を洗っている
かわいいあの子は
何か飾りを身の付けはじめた
「サッとすくって差し出した」
そんなようなもの
子供達は遊ばなくなり
公園は老人で溢れている
「サッとすくって差し出した」
のは、不良品ばかりで
使えそうなのは、古ぼけた骨董ばかり
あの子は偽物を掻き集め
心も、うそでいっぱいにしてしまった。
安っぽいヒロインは
遠くばかり見て
目先ばかり、つくろっている。
「サッとすくって差し出した」
そんな中に
太陽は沈まず、地球はちょっと傾いた
という噂まである
悲劇のヒロインになったあの子は
インスタントで欲望を満たしていく
太陽が沈まない北国の事?
地球は昔からちょっと傾いている?
隣りのだんなは、彼女に同情して
デタラメとガラクタを貢いだ
狭い車の中でふたりは
毎夜セックスをしている
小心者のだんなは
それで毎日、車を洗っている
子供達は
いたずらを思いつき
「天国への階段のカギを売っている所があるよ」
と、ウソをふれまわった。
彼女の心は、空っぽだった
地味な本物より
派手な偽者を好んだ
子供達は、よく知っている
あの女の人は、バカな愚か者だと
彼女はそのうそに飛びついた
子供達は
お菓子の裏の住所とデタラメな電話番号を教えた
「天国への階段のカギ」を買いに
隣りのだんなさんの車で
ふたりは出かけた
子供達は
もう、別のいたずらに夢中で
すっかり、そんな事は忘れていた
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黄色く点滅する信号機
注意して行ってもいい
見えない死角から
不注意な子供が飛び出して来る
でも、私は
左手で目を覆っている
私の不安は左から来る
長い沈黙と焦り
黄色く点滅している信号は
痺れを切らせ
人を混乱させる
左からの不安は
指の隙間から
赤く流れこんで来る
白い壁の端から緑の田園が見え
黒いアスファルトが照っている
茶色い裸地に、水溜りが見え隠れしている
空はいつの間にか
濁って灰色になっている
ずっと赤だった信号が
黄色く点滅している
私は不注意な過去の自分が
飛び込んでこないか
警戒して動けない
あぁ、でも
後ろで誰かが
警笛を鳴らしてる
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狭い所から
彼方にぼんやり
幻想を見ていた
そこへはたどり着かないし
道はなかった
無い場所へ、ない道を通って行く
そのうち
ヘトヘトになって、のたうちまわって
血と糞とヘドを垂れ流し
いつの間にか泥沼の中でもがいて溺れている
もがけばもがくほど、沈む
「私は最初から迷うような迷路にすら、入っていなかった」
じっとしていようか
「あなたは、あそこには行かれますが、ここと変わらないですよ」
灰色ばかりの幾何学模様は
そこにつながる石の道
遠くにはその幻想が見える
「腐った異臭を放つあなたの幻想ですよ」
一歩も踏み出さず
同じ所を回っていた
その狭い所から
外は実際
何も見えなかった
灰色がかった幾何学模様は
目の裏側の血管
その後目覚めた自分は
まだ、息をしていた
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悲しい月夜
ぬすっと犬めが、
くさった波止場の月に吼えている。
たましいが耳をすますと、
陰気くさい声をして、
黄色い娘たちが合唱している、
合唱している、
波止場のくらい石垣で。
いつも、
なぜおれはこれなんだ、犬よ、
青白いふしあわせの犬よ。
これまた、久しぶりに「月に吼える」を立ち読みしたら、支離滅裂、不条理な表現がすごいんで驚いている。病的な幻覚のような壊れた世界を独特な言葉で、表現している。
酒精中毒者の死
あおむきに死んでいる酒精中毒者の、(よっぱらい)
まっしろい腹のへんから、
えたいのわからぬものが流れている、
透明な青い血漿と、
ゆがんだ多角形の心臓と、
腐ったはらわたと、
らうまちすの爛れた手首と、
ぐにゃぐにゃした臓物と、
そこらいちめん、
地べたはぴかぴか光っている、
草はするどくとがっている。
すべてがらじうむのように光っている。
こんなさびしい風景の中にうきあがって、
白っぽけた殺人者の顔が、
草のようにびらびら笑っている。
詩は、ただ、病める魂の所有者と孤独者との寂しいなぐさめである。月に吼える犬は、自分の影に怪しみ恐れて吼えるのである。疾患する犬の心に、月は青白い幽霊のような不吉の謎である。犬遠吼えをする。(作者)
作者は裕福な家庭で育ったボンボンであるが、自らの不健全な病んだ心を嫌悪しながら、幻想の中に生きていた。
詩は、心から垂れ流された汚物でもあるし、感動から溢れ出た賜物でもあるんだろう。いずれにしろ孤独感が強いほど、その詩には力がある。
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